料理こそが人間を人間たらしめている。
レヴィ=ストロース
衝動的自炊
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始めの箴言はレヴィ=ストロースという文化人類学者のもので、彼は構造主義というものを提唱し、世界に多大なる影響を及ぼした知の巨人である。
構造主義を簡単に説明すると、人間たらしめているものを内部ではなく外部に求めようとするものである。
人間の思考や行動は内発的なものではなく、自然であったり、社会といった外部との関係性で決定されているという考え方である。
彼曰く、
「料理は自然から文化への移行を示すのみならず、料理により、料理を通して、人間の条件がその全ての属性を含めて定義されており、議論の余地なく最も自然であると思われる。死ぬことのような属性ですらそこに含められているのである」
この地球において、料理する生物は人間において他にはいない。
つまり、自炊することは、人間の基本的欲求、衝動として組み込まれていると考えられる。
ブレーズ・パスカルは、
〝人間は考える葦である〟
と、その著書「パンセ」の中で残しているが、
こうも言い換えられないだろうか?
「人間は自炊する葦である」と。
自炊することは、一種の瞑想、マインドフルネスに近しい行為である。
自炊する行為をmust(~しなけれならない)という義務感ではなく、want to(~したい)という強い欲求、衝動として行うことこそ、自分という存在を、その存在たらしめることにはならないだろうか?
忙しいからといって、外食で食事を済ませてしまうのは、その衝動を他者に譲ってしまうことになる。
これほど、もったいないことはないのではないか?
実は、自炊って、とてつもなくクリエイティブで、癒しでもあり、哲学的な行為なのである。
豚汁ならぬ鶏汁
育休中に〝wellness〟なレシピのポートフォリオを100個作るということを目標に掲げているわけだけれども、そんな自分のポートフォリオの中には、基本的には豚肉という食材は実装していない。
ということで、今回作ったのは、豚汁ならぬ「鶏汁」である。
鶏から出る旨味が、充分に野菜や味噌から出る旨味と相まって、その相乗効果が波状攻撃かのごとく、脳を刺激してくるのである。
豚汁も日本が世界に誇るスーパーフードではあるが、今後、我が家は鶏汁推しなのである。
【材料】
鶏肉、大根、人参、ゴボウ、里芋、こんにゃく、味噌、だし汁
鶏汁のメリットはたくさん作れば作るほど、鶏肉と野菜の旨味が味噌と溶け合うことと、一度作れば、家族の構成人数にもよるが、2~3日は楽しめることにある。
一度、大量に作ってしまえば、仕事で忙しくても、2~3日は温めるだけで食べれるからタイパに優れているのである。
よほどの事がない限りは、材料を適当に切って煮込むだけで、失敗しようがないほどにうまく仕上がるのも特色である。
しかも、具材が豊富ゆえに、これだけでも満腹中枢が刺激されて、満腹ホルモンとも呼ばれる〝レプチン〟が出てくるのを実感するのである。
ゆっくりと時間をかけて、味わって食べているうちに、ご飯にいきつく頃にはもういいかなっていう感覚になるのである。
書籍『医者が教える食事術 最強の教科書』(牧田善二/ダイヤモンド社)によると、
「ダイエットには食べる順番も大事です。私たち人間に備わっている消化・吸収のシステムを考えるなら、まず繊維質の豊富な野菜、続いて消化に時間のかかるタンパク質、最後に糖質を食べることによって血糖値の上昇が緩やかに抑えられます。」
「先にご飯をかき込んでしまうと一気に血糖値が上昇、結果的に同じものを食べたはずなのに肥満につながります。」
と書かれている。
これに従っていくと、まず食卓についたら、ご飯を一目散に口に入れるのではなく、鶏汁をじっくり味わい、他のおかずをゆっくりと丁寧に時間をかけて咀嚼することで、野菜とタンパク質がはじめに胃に入ることになる。
そして、ようやく、糖質であるご飯を食べることで、血糖値スパイクが起きるのを防げて、インスリン分泌量も穏やかになる。
カラダの中で起こっている血糖値の推移を曲線として思い描いてみると、こうした食べ方により、理想である台形になるのである。
血糖値の推移は台形(プラトー)が理想とされているが、鶏汁は野菜の食物繊維と鶏のタンパク質を含有しており、その理想を描くwellness Recipeなのである。
こうして考えると、食べることって戦略を必要とされる行為なのだな。
麻婆豆腐
お次は麻婆豆腐である。
これまで、麻婆豆腐といったら、自炊するにはあまりにも、あまりにもハードルが高すぎるという心理的ブロックを自分にかけていた。
しかし、いざ作ってみると何のことはなし、意外にも簡単であったのである。
その麻婆豆腐がこちら。
市販の麻婆豆腐のモトは、豆腐1丁さえあれば簡単にできるが、やはりどこか物足りなさがある。
自炊であれば、ベースとなる調味料さえ掴んでしまうと、ある程度の具材であれば、何を入れても許してくれる器量を持ってるのが麻婆豆腐。
ってことで、ちなみに今回作った麻婆豆腐はプラントベース。
【材料】
豆腐、テンペ、小松菜、きのこ、生姜、にんにく、味噌、醤油、豆板醤、だし汁、花山椒
こうやって見ると、これまでの麻婆豆腐の枠組みからは、かなり逸脱したものではあるものの、食べてみると、もろに麻婆豆腐なのである。
プラントベースでは物足りないなって人は、ここに動物性タンパク質として、ひき肉を入れてもいいし、自分は時折、鶏肉を薄くきって、小間切れみたくして投入したりもする。
今回使ったテンペとは、インドネシア発祥の納豆みたいな代物。
大豆をテンペ菌で発酵させた食材である。
納豆みたいに特有の匂いはなく、使い勝手がいいので、自分はよく他のレシピでも使っている。
自分が作る麻婆豆腐の特徴を上げるならば、豆をこれでもかというくらいに主役に押し上げることである。
今回は、テンペを使ったが、基本は茹で大豆を使うことが多い。
豆の歯ごたえが小気味良く、癖になるである。
これをマスターしてみると、麻婆豆腐を作るのに、モトにお金を払う必要なんてないという果てしない自由という翼を得たのである。
ベースの枠組みさえ押さえれば、冷蔵庫に残っている具材でいかようにも作れるのが、麻婆豆腐。
こうして、自炊により、自分のこれまでの凝り固まった心理的ブロックを外すことが出来たのである。
これぞ、「プリコラージュ」と言ってもいいのではないか。
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