ドミノ倒し
テレビなどでギネスに挑戦しているドミノの映像を見たことがあるだろうか?
そうしたら、想像しやすいのだが、生活習慣病を始めとする病気は単独で存在するものではなく、それぞれが連関しており、ドミノのように波及的に拡がっていくものだという。
はじめの1個がスローモーションかのごとくに静かに、ゆっくりと次のドミノに倒れかかる。
そうしたら、あとは自動運動で次から次へと倒れていくドミノ。
「メタボリックドミノ」とは、今から約20年前の2003年に慶応義塾大学医学部内科学(腎臓・内分泌・代謝)教授である伊藤裕医師にて提唱された概念である。
これによると、そもそもの始まりはちょっとした生活習慣の乱れである。
まずは毎日の糖質摂取が過剰になることから「肥満」となる。
この段階ではまだ健康診断では指摘されるほどのものではないが、自覚はあり、最近お腹回りが大きくなってきたなとか、運動も忙しくて全然してないな、食べたらすぐ眠くなるなとか、ちょっと疲れやすいな、その程度であろう。
しかし、この段階から見えない所で気づかないほどに静かにカラダの中で、ドミノは倒れ始めているという。
それが、やがては「食後高血糖」、「血圧上昇」、「脂質異常」といった、いわゆる「メタボリックシンドローム」が起こる。
そこからはどんどん波及的にドミノが倒れていき、血管が固くなり、肥厚し、弾力性がなくなる「動脈硬化」が進む。
加えて、「糖尿病」が起こり、それが原因で3大合併症である「腎症」、「網膜症」、「神経障害」へとつながる。
他にも、「腎臓病」、「脳卒中」、「心不全」、「認知症」、「肝硬変」といった多くの疾患が起こるのである。
ここからわかるのは、始まりはほんの些細なことからということである。
「今日、ちょっと食べ過ぎちゃったな。明日は節制しないとな」
こういったセリフが次の日も、また次の日も続いていく。
そのうちに食べ過ぎが通常運転となっていく。
それが気づいたら、ドミノがあれよあれよと倒れていき、あちこちにドミノが枝分かれしていき、段々と複雑な道を形成していき、下流に行けば行くほどにどうしようもなくなり、すでに止めようもないほどになっているのである。
そして、最後のドミノが倒れた時には…。
このドミノを上流でいかに止めるかというのが、予防医学や先制医療の考え方であり、要はドミノの駒が倒れ、それぞれの病気になる前に、そもそもドミノが倒れないようにするということなのである。
通常の医療は、ドミノが散々に倒れ乱れきった後にようやくやってきて、その瓦解したドミノをひとつひとつ治していくイメージ。
枝分かれしきった後のある一つのドミノの山を治した所で、複線化している他の道々で倒れてしまっているドミノを治すことはすでに不可能に近いし、それぞれのドミノを治すのに人員と技術がたくさん投入されることになる。
これでは医療費が右肩上がりに増大している現状に歯止めが効かないのは当然といえば当然、想像にがたくない。
始まりは…
ドミノの下流に行くほどに手の施しようがなくなるし、QOLもだだ下がっていき、日常生活も仕事もままならなくなってしまう。
そうならないためには、ドミノの上流でドミノが倒れないようにせき止める必要がある。
「メタボリックドミノ」の源流に何があるかを探ってみると、そこには生活習慣が大きく関与しているのが見えてくる。
この生活習慣が乱れることによって、ドミノが梨崩し的に倒れていく訳であるから、この生活習慣を整えることが結局は全てなのかと思う。
そして、これは他人がどうこういって何とかなるものではないし、他人が代わってやってくれるものではないし、結局は自分が責任をもってやっていく行為の積み重ねということになってくるのである。
はじまりのドミノを倒さないための生活習慣を整えるって、ちょっとしたことだと思うからお金も全然かからないと思うんだよね。
高い会費を払ってジムに行くとか、有象無象のサプリメントに頼るとか、高血圧や脂質異常に対する薬を飲むとか、瘦せそうな流行りのダイエットに逐一飛びつく、そういったことの前にお金をかけないでも出来ることってたくさんあると思うのである。
結局は、1日2~3食を決まった時間に食べる。
無駄に、お腹も空いていないのに、惰性で間食をしない。
睡眠時間をしっかりと確保する。
まだまだ他にも基本的なことがたくさんあるけれども、こういった昔から散々と親やおじいちゃん、おばあちゃんから口すっぱく言われてきたようなことが結局は流行り廃りがない真理なのかなと歳を重ねるにつれて気づいてくる次第なのである。
結論、流行りのダイエットには飛びつくなということである。
病気知らずのおじいちゃん、おばあちゃんが昔に何気なく言っていたようなことや、もしくはそういった方々がご健在ならば、その人達の生活習慣を参考にするのもいいかもしれない。
きっと、ファストフードや超加工食品といったものをダラダラと食べることはなく、メリハリを持って、形がわかるものを使った食材で料理をして、いつも決まった時間に腹7とか8分くらいで満腹になりすぎないように、ほどほどに留める。
そして、夜更かしせずにしっかりと寝て、朝は早く起きる。
こんな基本的なルーティンをしっかりと送っているのではないかと思うのである。
基本的なことをしっかりと守ってさえいえば、ドミノが倒れることはないし、もしはじめの何個かが間違って倒れたとしても、すぐに簡単に止めることが出来るのである。
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